日常を綴る、想いを残す

家づくりにおいて「シンプル」という言葉はどんな意味を持つ?

みなさんこんにちは。アトリエカレラの柿山です。

シンプルでありつつ魅力のある住宅というものはたくさんあります。

ちょっと「シンプル」というものについて触れてみたいと思います。

副産物という厄介者

シンプルと聞くと、「カッコいい」「何もない」「冷たい」「飾り気がない」というキーワードが思い浮かびませんか?

ただの白い空間がシンプルだと独り歩きしてしまっている例もたくさんありますが、僕が考えるシンプルというのはそういうものではないと思っています。

設計をするためには、お客さまがどのような暮らしを望んでいらっしゃるか、を知る必要があります。

それを具体的な空間として表現するために設計をしていくわけですが、その過程で図らずとも「副産物」が生まれてしまうことがあります。

この副産物はプランごとに異なり、非常に厄介なものたちです。

それら副産物を見つけることが出来ない、或いはどこに副産物が潜んでいるか気が付かない設計者が設計していくと「一見するとまとまっているようで、全くまとまっていない」という空間、若しくは住宅が出来てしまいます。

一方、副産物がなんであるか、どこに潜んでいるか、そしてどのようにして発生したかがわかる設計者は、「まとまった」空間を作り上げることが出来ます。

美しいかどうかを判断してみる

いろんな要素が複雑に絡み合って、出来あがるプラン。

「全体でどのようなものになっているか」という視点で見てみた時に「美しいかどうか」を判断することになります。

ここの時点で美しれば、僕はシンプルだと判断しても差し支えないと思っています。

 

別に「白で何もなくカッコいい空間」にこだわる必要はありません。

 

様々なテクスチャが織り交ぜられた壁面でも良いでしょう。

装飾が散りばめられた艶やかなカラーやライティングがあっても良いと思います。

いくら装飾を施しても、施さなくても、考え抜かれた合理的な空間はシンプルです。それは結果的にイコール美しいものであることがほとんどだと思っています。

 

良い建物と言われるものを見てみてください。

きっと合理的且つ美しい空間は、心を揺さぶり、雰囲気のあるシンプルな空間であると思います。

 

しかし、ここでひとつだけ疑問が残ります。

「美しい」かどうかという判断には物差しがありません。見る人々によって「うつく‥しい?」と異なる感情を抱くでしょう。

となれば、シンプルだというものも定義が難しくなってくるかと思います。

 

ある人にとってはシンプルでも、別の人にとってはシンプルではない。

そのような結果に至ります。

 

でも住宅というものは住む人々にどのように映るかが全てだと思います。

皆の感情や評価を気にする必要はないと思っています。

ですから別に自分にとってはシンプルだけれども皆はそうは思わない。という結果になってもそれはそれで一つのカタチなのではないでしょうか。

 

設計者が違えば解も違いますから、その設計者の価値観とご自分の価値観を照らし合わせた時に「同じ方向を向いているか」、プランが「美しいかどうか」を判断されると宜しいかと思います。

整理するということ

整理して考えると、何事もある意味「無駄のない」ものになります。

無駄がないというのは、必要なものしかないということです。

つまり不要なものにコストを掛けなくてよいということになります。

必要なものにしっかりとコストを掛けて、良いものを作ることができるということなんです。

整理するというのは、非常に合理的かつメリットが多いことだとわかって頂けるかと思います。

 

しかし、これだけだと『家』というのは成り立ちません。

『家』は毎日を過ごす空間ですから、合理的なだけだと人は「愛着」というものを抱かなくなってきます。

 

『家』は「好き」でなくてはなりません。

「好き」な空間でなくてはなりません。

この「好き」かどうか、合理的かつシンプルな空間に「魅力」をいかに注ぎ込むことができるかが実は最大の腕の見せ所であり、設計者の個性であると思うのです。

最後に

あるお部屋の写真を見た時に「何もなくてスッキリとした、シンプルな空間ですね」という感想を述べたとしましょう。

誤解を恐れずに言うと、そのような場合は大抵ごちゃごちゃする空間かつ寒々しい空間であることが多いと思います。

なにか落ち着かない、ざわつきを覚えます。

窓枠や建具枠の納め、動線のまとめ、光の入り、影の出来、手摺の付き方、窓の位置、コンセント・スイッチ類の場所、その他に照明計画、天井の高さや空間の広さ、仕上げ材の選定そのどれをとってもバランスよく無駄なく計画されたプランがシンプルな空間なのだと思います。

 

「神は細部に宿る」という言葉は様々な分野で使われる言葉ではありますが、建築家『ミース・ファン・デル・ローエ』がよく用いた言葉であったようです。

ミースの建築は「美しい」という一言に尽きます。

ミースが言う細部とは一般的には「ディテール」のことを指しているとは思いますが、それだけでなくディテールの集合体がどのようなバランスで空間に影響を与えるのか、そこに細心の注意を払ってこそ本当のシンプル=美しさがあるのではないかと個人的には思います。

 

僕のような者が「ミース」を語るなんて、おこがましく、大変こっ恥ずかしいのでここだけの話しにしておいてくださいね(笑)

更に、「シンプル」を語るなんて僕のようなデザイナーの端くれが業界にメスを入れた‥‥そんなメスを入れられる程の影響力があるわけないので、まぁ見逃してください。

 

奥が深いシンプルな空間。

僕が思う「シンプル」という定義に対して、恥ずかしくないような空間づくりに勤しまなくてはならなくなってしまいました!笑

 

建築設計事務所atelierKALLELA 柿山

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