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依頼先の選び方と坪単価の落とし穴

みなさんこんにちは。アトリエカレラの柿山です。

戸建住宅を建てる際、建売住宅よりもやはり注文住宅をチョイスする方が多いかと思います。

依頼先によって家づくりはほぼ決まる

注文住宅という形で住まいづくりを行うにあたって「予算」「土地」「依頼先」の3つの要素で、その骨格が決まってしまうと言っても過言ではありません。

依頼先には「ハウスメーカー」「工務店」「建築家」があり、依頼先次第で家の工法やデザイン、性能などがほぼ決まります。ですから、依頼先選びは慎重になった方がよろしいでしょう。

選択にはポイントがあります。それは「予算」「土地の形状」「スケジュール(工期)」「設計の自由度」などです。

ハウスメーカーは特殊な形状には対応出来ませんが、短期間で建てられます。一方、工務店は標準的な予算と工期、建築家は設計の自由度が高く特殊な土地の形状にも対応できます、というように、それぞれ得意分野が異なります。

大事なのは、自分たちがどのような家が欲しいのか、わかった上でそれを叶えてくれる依頼先の特性を知ることです。

フランス料理店で寿司はオーダーできない

みなさんは、外食する時どのようにしてレストランなどを選びますか?きっと食べたい料理のジャンルや予算に合わせたレストランを選ぶでしょう。それと同じことが住まいづくりにも言えます。叶えたい要望と依頼先の特性が合わなければ時間や予算をただただ浪費してしまうことにもなりかねません。

人柄や宣伝文句に惑わされない

注意すべきは、「良い人が良い住まいを建ててくれるわけではない」ということです。

例えばハウスメーカーの営業マンは住宅販売のプロだから接客は上手いですが、良い提案をし良い住まいを計画してくれるとは限りません。また工務店の社長さんにも能力はとても高いが、プレゼンテーションが下手であることで、お客様と住まいづくりで縁を持てない人もいます。そして、建築家も多少とっつきにくいと感じても要望をよく理解して希望以上の提案を行ってくれる場合だってあるのです。

各依頼先の特徴って?

それでは、それぞれの依頼先についてもう少し詳しく見ていきましょう。

ハウスメーカー

一番の長所は大手の安心感と保証能力の高さでしょう。耐震性など防災の面でも高性能を誇り、部材を工場で生産するため品質が安定しています。

また、モデルハウスで実例を見ることができ資金計画の相談や仮住まいの紹介などのサービスもあります。完成までも期間も短く現場も予定通りに進行します。

ですがその一方、プランの自由度が低かったり、仕上げ材や建具、照明器具などが決まったものの中からしか選択できなかったり、特殊な形状の土地には対応できないなどの不便もあります。建築家とは異なり設計料はとられていないように見えますが、建築費の中から住宅展示場の維持費や宣伝費、営業経費などが賄われていることは確かです。

工務店

工務店の規模は様々です。年間に数棟だけの家族経営から、年間に数百棟の大きな規模の工務店まであります。工務店の社長=腕の良い大工というイメージはもはや昔のことです。

設計は社内の設計士や契約した建築家が行うなど、昔にくらべ設計のレベルは上がってきているようです。在来工法やSE工法など木の家を得意とするところが多く、自然素材を積極的に使ったり、キッチンや造作家具などを大工がつくったり、というように各社特徴を打ち出してきています。

心配なのは、規模が小さい工務店の場合に、完成前に倒産したり十数年後のアフターメンテナンスを行ってもらえるかどうかということです。完成後の保証については「住宅完成保証制度」を利用すれば、万一の際も別の工務店が工事を継続してくれます。

現場監理は社員の現場監督が行うケースがほとんどです。

建築家

建築家はかつて憧れの存在と言われていましたが、現在ではだいぶポピュラーになりました。

親しみやすく親身になって相談に乗ってくれる人も多くいます。

建築家の特徴は工法や敷地条件に縛られず、施主の希望する生活空間をいかに実現するか考えてくれるところです。

その一方、建築家によって得意とするデザインや生活に対する考え方は異なり、そのマッチングが最大のポイントと言えると思います。個人同士の付き合いになるので、設計が気に入らない場合に断りにくいという心配もあるかと思いますが、設計監理契約に従った料金を段階的に支払えば問題はありません。

尚、建築家に依頼できるのは「設計」と「工事の監理」で、別に施工業者と施工契約を結ぶことになります。

工事が始まってからの監理は建築家が行い、施主の立場から工事現場をチェックしてくれるので安心して任せられるというメリットがあります。

建築家に依頼するとメリットしかない

建築家に依頼するのに一番の弊害となっているのは「設計料」ではないでしょうか。

それはハウスメーカーや工務店に比べ、余分に費用を払っているという心理が働くからだと思います。

ですが実際はそうではありません。目に見えなくても、きちんとハウスメーカーや工務店は設計料をとっています。みなさんが、見て判断することができない見積書の明細の中に隠れているのです。

建築家は適正価格を知っていますし、数量も知っています。ですから、見積もりに工事とは関係のないお金が計上されていればすぐにわかります。建築家に依頼すれば設計料などの余剰利益上乗せ分も排除することができるんですね。

ここに建築家に依頼するメリットがあります。

先程、弊害となっているのは「設計料」ではないかと書きましたが、実際はどの依頼先を選んでも設計料は掛かっているのです。これを知っていれば、建築家に依頼するデメリットと見て取れる「設計料」の支払いという弊害も一気に払拭できると思いませんか? つまり時間さえ許せば、自由でオシャレな空間が手に入る建築家に依頼するのはメリットしかないということがわかります。

坪単価の落とし穴

住宅価格の目安として良く耳にするのが「坪単価」という言葉です。

依頼先を決める際も、坪単価を基準にして「高い」「安い」を判断する方が多いでしょう。ですが、安くて坪あたり30万円から坪あたり100万円以上と幅が広いこともあります。

同じ木材なのになぜ?と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

坪単価に明確なルールはない

実は「坪単価」について明確なルールはなく、計算方法は各社バラバラなのです。最も一般的なのは「本体工事価格」を「延べ面積」で除した価格です。しかし実際には、これに加えて外構工事や付帯工事、諸経費が掛かってきますから少なくとも2割~3割増しになると考えたほうが良いでしょう。

坪単価を安く見せたいという業者は、本体工事費にキッチンや浴室、照明などに関わる設備機器を含まないケースもあります。

これらはすべてオプション扱いとなり、オプションなくして普通に住むことが出来ません。普通に住むには坪単価がさらに上がってしまいます。信じられないかもしれませんが契約後や着工後に初めて気づくケースも実際にありますから、注意が必要です。

また、施工面積(住宅本体だけでなく、庭なども含めた面積)で坪単価を割り出すという、どんでもない業者もあるほどです。これでは坪単価が驚くほど安く見えてしまいます。

坪単価はあてにならない

キッチンに高額なものを採用したり、照明器具に高価なものを使用したりしただけでも坪単価は十万くらいはすぐに上がります。斜面地に建てたり、構造が変化しただけでも坪単価は跳ね上がります。平屋であれば更に上がります。

一般的な工法の場合の坪単価は?と銘打っても、何が一般的なのか、その定義すら難しいのです。

例えばあるお客様にとっては、断熱性能が高すぎるくらいが一般的であっても、違ったお客様にはそれほど断熱性能は高くなくてもそれが一般的だという認識である場合が多々あります。

建築家はハウスメーカーや工務店などと違い、工法や断熱などの性能に関して仕様を決めているわけではありませんので、さらに坪単価が意味をなさなくなってしまいます。建築家は案件ごとに要望を考慮して予算配分を決め計画していきますから、ますます坪単価はあてにならないということがわかります。

正直な業者ほど不利になる。それが坪単価。

坪単価というのは、坪単価に正直な業者ほど不利になってしまうという危険な比較方法なのです。

坪単価が安い!という謳い文句に引っかからないよう、このブログを読んで下っているみなさんには是非気をつけて頂きたいと思います。現在の材料や職人らの価格相場で、品質の確保された住宅を建てるためには、坪単価(本体工事÷坪数 その他諸々含む)で80万円以上は必要と言われています。地域差はありますが、これがいきなり50万などになることはありません。

最後に

安くて高品質な住宅を手に入れたいというユーザーの心理を逆手にとって、坪単価という比較方法で近づいてくる業者には注意深くその内容を確認するようにしてくださいね。

いかがでしたか?坪単価の実情がわかって頂けたかと思います。それでもまだ坪単価を基準に依頼先を比べますか? もっと言えば、現場で手を抜かれる心配もあるので、実際のところ「監理が一番大事」ということになるのですがそれは別の機会にご紹介します。

 

設計事務所atelierKALLELA 柿山

 

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